『オッソブーコ(osso buco)』はイタリア、ミラノの郷土料理で、仔牛の骨付きすね肉(多くの場合は後ろ足のすね肉)の輪切りを煮込んだ料理です。
イタリア語で『オッソ(osso)』は『骨』、『ブーコ(buco)』は『穴』をあらわし、『穴のある骨』という意味を持つ料理です。
骨付きのすね肉を調理すると、中心に穴が開いたような形になることがその名の由来です。
骨が付いたままのすね肉の輪切りをじっくり時間をかけて加熱することで、すね肉のバランスのいい筋肉質の繊維が柔らかくなり、ねっとりとした旨味が引き出されます。
また骨の中の柔らかくこってりとした骨髄を味わうのも、この料理の醍醐味と言えます。
さらにミラノ風では、『グレモラーダ(gremolada)』または『グレモラータ(gremolata)』と呼ばれる、ニンニクとレモンの皮、イタリアンパセリを刻んで合わせた薬味をあわせて、爽やかさを添えるのも特徴となっています。
また、アンチョビやローズマリー、サルヴィアを加えることでさらに複雑な風味を加える場合もあります。
◆『オッソブーコ』の歴史
『オッソブーコ』は中世から食べられていたと言われており、現在のレシピではトマトで煮込むものも多くみられる一方で、オリジナルのレシピではトマトは使われていなかったとされています。
その理由としては、イタリア料理では定番とされているトマトですが原産は南米のアンデス高原、ヨーロッパに広まったのは1492年にコロンブスが新大陸(アメリカ大陸)を発見してトマトを持ち帰ってからであり、この『オッソブーコ』が作られ始めた時代にはまだトマトはイタリアに存在しなかったためです。
◆『オッソブーコ』のレシピの例
①厚さ4cmの仔牛の骨付きすね肉の輪切りに塩とコショウをし、全体に小麦粉をまぶします。
②鍋に油を熱し、肉の両面を焼き固めます。小さめの角切りにしたにんじんとセロリ、みじん切りの玉ねぎ、白ワイン、鶏のブロード(出汁)、ローリエを加えてアルミ箔をかぶせ、180℃のオーブンで2時間半加熱します。
オーブンから出した後一晩おいて味をなじませ、表面に浮いた油を取り除きます。
③肉とソースをあらためて温めなおし、皿に盛り付けます。『スーゴ(鍋に残った汁)』に、上にも書いた『グレモラーダ』と『フォン・ド・ブルーノ(焼いた仔牛の骨でとった褐色の出汁)』を加えてソースを作り、肉の上からかけて完成です。 この料理の付け合わせとしては、ポレンタやホウレン草のバター炒め、ジャガイモのピュレの場合もありますが、最も定番とされているのは『リゾット・アッラ・ミラネーゼ(risotto alla milanese)』と呼ばれるサフランのリゾットです。
『オッソブーコ』のソースとリゾットを混ぜながら食べると特別おいしくなります。
このように、プリモ・ピアット(イタリア料理のコースにおいてリゾットやパスタなどの主食となる料理)とセコンド・ピアット(肉や魚などの主菜となる料理)が同じ皿に盛られて提供される料理は『ピアット・ウニコ(piatto unico)』と呼ばれ、ボリュームもたっぷりで一皿で食事を完結することができます。 イタリア料理の煮込みの中でも最も有名な一皿ともいえる『オッソブーコ』ですが、日本では本格的なイタリア料理店などでなければ目にしないためあまりなじみのない料理です。
初めてみたときにはその『仔牛の骨付きすね肉の輪切り』というインパクトのあるビジュアルに圧倒されるかもしれません。その一方で、すね肉のうま味や骨髄の味わい、野菜の風味などが一体となり、非常に濃厚なおいしさを感じることができます。
材料が普段なじみのないものであるため、一般のご家庭で作るのは難しいかもしれませんが、外食の際などにメニューで見つけたときにはぜひ一度味わっていただきたい一品です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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