『パエジェーラ』と呼ばれる専用のパエリア鍋(両側に取っ手のある平底の浅くて丸いフライパン)を使ったお米料理です。
たっぷりの具材を炒めてお米と水を加え、炊き上げます。
スペインでも特に稲作の盛んなバレンシア地方が生まれ故郷だと言われています。
日本では『パエリア』が一般的な呼び名ですが、このバレンシア地方の言葉で『paella』と書き、『パエリャ』『パエジャ』とも言います。
日本では海の幸をたっぷりと使った『パエリア』がよく知られていますが、本来バレンシア風の『パエリア』は地元産のカタツムリや豆、野菜や鶏肉、ウサギ肉などの山の幸を具としたものが多く見られます。
ここでは、ほんの一例ですが『パエリア』の種類や、このバレンシア地方に伝わる、『パエリア』に似つつも少し違ったお米料理をご紹介します。
◆『パエリア』の例
バレンシアのパエリア(Paella valenciana):お店や家ごとに具材は変わりますが、前述のとおり、山の素材を使って作られることが多いです。
ウサギ肉やカタツムリ、インゲンや赤ピーマン、サフランが具材として使われ、魚介は入れずに作られます。肉や豆からもだしが出るのでコクがあり、おいしいパエリアです。
魚介のパエリア(Paella de mariscos):日本でもとてもメジャーな『パエリア』。
様々な種類の魚介が入るので、見た目が華やかで味わいもとても贅沢です。
現地バレンシアでも人気の一品です。
入れる魚介はエビやイカ、貝類が中心ですが、白身魚が入ることもあります。
州都のバレンシアをはじめとして地中海に面して良質な漁港が多いこの地方では、『パエリア』に限らず魚介を使った料理がたくさんあります。
イカ墨のパエリア(Arroz negro):現在は魚介のパエリアとともに世界的に有名になりましたが、元々はバレンシアからカタルーニャにかけての地中海沿岸地域が発祥と言われている名物の『パエリア』です。
初めて目にすると真っ黒に黒光りするインパクトある印象に対して、マイルドで奥深い味に驚きます。
イカやその他の具材の旨味をしっかりと吸い込んだお米にイカ墨のマイルドさがからんで、シンプルな一方で食べ飽きることがありません。
◆その他のバレンシア地方のお米料理
オーブンで焼いたお米料理(Arroz al horno):スペイン語の『horno』とはオーブンのことです。
お米を肉や豆、野菜や丸ごとのニンニクをスープと一緒にカスエラ(『Cazuela』。
スペイン語で鍋料理や鍋そのものを意味する、素焼き製の耐熱陶器)に入れてオーブンで焼いたダイナミックな料理です。
『パエリア』との違いとしては、パエリア鍋を使わないこと、『パエリア』は水分を飛ばして米に少し芯を残して仕上げる一方で、こちらはしっとり仕上げてお米の芯までしっかり火を通すことです。
エルチェのお米料理(Arroz con costra):バレンシア地方の南端にあるエルチェという街に伝わる、お米を使った郷土料理。
『costra』とはスペイン語で『覆った』という意味があり、様々な具材を加えた炊き込みご飯に溶き卵を入れて高温のオーブンでさっと焼いて仕上げます。
優しい味わいの卵に覆われたスパイシーな炊き込みご飯がクセになります。
溶き卵を溶きすぎないこと、卵を入れる前に高温にすることで卵がご飯にしみこまないようにして、表面をふっくらさせるのがポイントです。
米や野菜、果物の栽培が盛んなバレンシア地方ですが、特にお米はスペイン随一の生産地です。
これはイスラム教徒からもたらされた稲作が、肥沃なバレンシアの土地に適してたため根付いたことが由来です。
具材をそろえ、ポイントを押さえれば意外と家庭でも簡単に作れる『パエリア』ですが、この一品で食卓がとても華やかになります。
主食に悩んだときに作ってみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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